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6.192012
教育が効果を上げる場合もある:英会話教育の基礎(2)
さて、塾に行って成績が上がった人の話。
たいていの人が、塾で特訓受けてもさほど成績が上がらないという事実...私は、大学で教員をやりながら塾のようなものをやっていたのでそのことはよく分かる。
「塾のようなもの」とわざわざ書いたのには理由がある。私がやっていた塾は、子どもの学習行動の研究、効果を上げる学習方法の研究、不登校児や学力不振児の指導を主とした塾だったので、普通の学習塾とは少し違っている。ま、塾には違いないけれどね。
私の塾でも成績が上がった子はいた。で、その理由だが、前回と異なる原因を上げると
「時期が来た」というやつ
専門用語で「レディネス」と言うんだけれど、日本語に訳しにくい。準備の状態とでも言えば良いのかな。このレディネスは神経系の成熟に基づくもので、これがないと...教育はなかなか効果が上がらないことが予想できる。
「予想できる」なんて歯切れが悪いけれど、レディネスがなくても教育が効果を上げる可能性がゼロではないんだ。厄介なことに。 ただ、レディネスが無ければ、ま、教育の効果(表面的ではない根本的な効果)は限定される。
逆に、このレディネスができた子どもの場合は、ぐっと成績が伸びる。時には、劇的に伸びる。ごく普通の成績だった子どもが、その科目に関して、急速に成績が伸びる。50点代だった子どもが80点代以上になることもある。
こういう子どもには対しては、塾も親も、「塾に行って成績が上がった」というのだけれど、本当は「時期が来たから成績が上がった」ということなんだ。
このレディネスについては、古くはゲゼルというドイツの心理学者がやった運動能力トレーニングの例がある。また、その研究とは視点が異なるというか、理論的背景がまったく違うのだけれど、スイスの心理学者ピアジェの発達理論がある。
どちらも結果的に似たようなことなんだ。ゲゼルは、成熟がその子どもの自然な神経系の成熟により出現する現象であるとし、ピアジェは、子どもの知的発達は自発的な子どもの活動によって生じるシェマの均衡化の結果だとする。
ああ、頭が痛くなる~ この話はこれでおしまい。(ま、いつもこんな話をして学生に嫌われているのだけれど^ ^;
要するに、成熟や発達は子どもの内部から生じるもので、外部からの働きかけによるものではない...ということ。
長い間教員やっていると、そして、なかなか成果が上がらない現実を見ると、納得することが多い。がんばって教材を工夫し、指導法を工夫し、あれこれ苦労してそれこそ全力で指導しても、上がらない時には上がらないのだよ。
知的な障害を持つ子どもにも指導した。確かに、多少は成果が上がった。英語の単語を覚えたり、とても簡単な英語の文を理解したりすることはできるようになった。それでも、知的な障害がある子どもの場合、どんなに指導しても一般の子どもの水準には届かなかった。
ま、彼らも英語圏の国に生まれれば、英語で会話することはできるようになるわけで、環境の影響という意味での教育は、それなりに効果はあるのだけれど....限られた時間、回数で行われる教育の効果については....効果は少ないだろうね。
で、オンライン英会話の話しだが、これも限られた時間、回数で行われる教育なんだけれど、ほとんどの日本人は「まったく機会がない」状態におかれているわけで、機会が与えられることの意味は大きい。頭の中に雑然と蓄えられていた知識が、機会が与えられることにより活性化するわけだし、その中で、ばらばらだった知識がまとまってレディネス的なものが出来てくることも考えられる。筆者はこれを「発酵する」と呼んでいる。何もなければそのまま腐っていく知識が、それをかき混ぜる機会が与えられることで発酵する...ぬかみその原理だね。
次回は、その具体的な例を挙げながら考えてみよう。
(2012/6/18)
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