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6.12012
環境は大きく影響する。ただし、マイナスの方向の話
さて、遺伝については、ま、なんとか筆者の言いたいことを理解いただけたことにして、次に環境の話。こちらは、もろに教育と関わるのでね。(後で詳しく述べます)、
「環境」が発達に影響する...うん、誰でもそれは知っている、と言うか、信じている。「氏より育ち」とか、「三つ子の魂、百まで」とか、環境が影響する、だから、しつけは大切だ、なんて主張される。
環境はどれくらい発達に影響するんだろう。 これはなかなか難しい問題で、未だにいろいろな人がいろいろ主張していて、明確な結論が得られていない。
ただ、確かに影響する、それも大きく影響するということがある...それは事実。
で、その大きく影響するケースだが、二通りのタイプがある。基本的には環境の欠如による発達遅滞が根底にある。
タイプⅠ:遅滞型
発達や学習に必要な環境が剥奪ないし、大きく欠乏しているために発達や学習が遅れた状態にある子どもの場合。
これには、スピッツやボウルビィという研究者の「ホスピタリズム(施設病)」についての有名な研究がある。乳幼児の施設(親の居ない子)で、乳幼児の数に大して保育士の数が少ない場合には、発達が遅れるという研究だ。
つまり、母親の愛情を十分受けなかった子どもは、病気になりやすい、身長・体重が少ない、知能の発達が遅いなどの問題が生じるる...と言うものだ。 (「母性神話」などとして、ずいぶん批判受けたけれど、基本的には正しい。ま、先に挙げたボウルビィも、「施設病」については、後で否定的になるのだけれど、母性的な養育の必要性は強調している)
実際、保育士の少ない施設から多い施設に移動したら、心身の発達が促進されたとか、手厚い世話を受けた子どもと、あまり世話してもらえなかった子どもとを比べると、心身の発達に差があるという研究も多い。
筆者の経験(発達の調査やカウンセリング、教育指導経験など)からも、母性的養育がその後の発達に影響している...としか考えられないケースが結構あった。
「ほらみろ、やっぱ環境は大きな影響を与えるだろう」と、ふんぞり返らないでください。
ほとんど与えられなかった環境(環境剥奪)の中で、発達する機会がなかった子どもたちが、必要とする環境を与えられたために発達が始まったためであって、本来の発達水準に戻っただけのことなんだ。元々良い環境にいた子に、さらに良い環境を与えればもっと伸びる...という推論は間違っているんです。
このホスピタリズム、母性的育児の重要性などの他にも、環境が大きな影響を与えた例は数多く報告されている。古くはA・ゲゼルの報告した「オオカミに育てられた子」のアマラとカマラ(アマラは早くに死んでいる)など、環境の剥奪で発達遅滞を起こすことはよく知られている。
このような子どもに適切な環境を与えれば、当然、普通の発達水準に近づくように急激に発達する。
繰り返して言うが、このような事実は、「だから、良い環境を与えればぐんぐん伸びる」という主張の根拠となるものではないと言うことだ。
(2012/11/8)
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